「携帯電話の中は、今や一つの宇宙だ。」
豚出藻草太という学者は比喩的にそう言った。ちなみに読み方はトンデモソウタである。ふざけた研究とふざけた態度をもっとうにしている学者だが、その素性と経歴は輝かしいものだからふざけている。
私がこの説を見たのは最後の学校を卒業した頃だった。つまらない卒業論文を書き終えて、つまらない学位を取った私にはちょっとした刺激になった。これは馬鹿げていると思いながらも、私は携帯電話宇宙説を、一つ研究してみようと思い立ったのだ。
まず何から始めたらいいものか、私は自分の携帯電話を手に取った。そして、母親の携帯電話と妹の携帯電話。父親の携帯電話を机の上に並べて置いた。
己の携帯電話を見てみよう。黒く、ストラップはついていない。しょっちゅう落とすので頑丈なタイプのものだが、所々にキズが付き、塗装部分は剥げ、みっともないことこのうえない形態をとっていた。使用頻度に関しては、おそらく絶望的だろう。悲しくもなってくる。週に一度、使用することがあれば良い方だろう。メールと着信履歴は「ありません」の一点張り。壁紙やなんやら、データフォルダの中には、一つとして情報が入っていなかった。しかし、そんな使い方を多少気に入っていた。情報化の世間に斬って返すような心持ちと、紛失してもデータの流出が極端に少ない所で勝っている気がするからだ。唯一の友人や連絡を必要とする相手。それらはアドレス帳の中でメールアドレスと電話番号のみが、イニシャルのみで、入っている。機械に頼らず脳を活躍させていることも私の勝ち誇る理由だ。負け犬の遠吠えではないのだ。
母親の携帯電話に考察を移そう。白く汚れ一つない。複数のストラップは妹や私が昔買ってきてあげたものだったりして少し涙が浮かぶ。とにかく綺麗な携帯電話だ。折りたたみ式をバカッと開くと、待ち受け画面には大好きな俳優の笑顔が一面に溢れていた。見なかったことにしたいが考察には不可欠なのでしっかりとここにメモを取る。主な使用用途は主婦仲間との連絡や、妹や私の管理に使われる。父親との通話やメールがそれらと比べると極端に少ないのは、必要がないからかどうか、不安に思うこともなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくも……ない。余分なデータが入っていないのは、おそらくそれも必要がないからなのだろう。同じように、使い方が分かっていないからだとは私は思っていないこともなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくも……ない。
恐ろしき妹の携帯電話を見させてもらおう。ホワイトのシンプルなデザインに、どす黒く汚れたストラップ達の大群。絶妙なコントラストを利かせているのは我が妹ながら敬服に値する。待ちうけ画面はごちゃごちゃしていて目に悪い。使用頻度は頻繁すぎてここに考察することも許されない。既に回収されてしまった。
残るは父親の携帯電話。会社で使っているからか、ストラップに小さなシャチハタや芯の収納式ボールペンなどがくっついている。実用重視だ。待ち受け画面を見ると初期設定のままだが、着信が入るとアイドルの写真が現れた。意外な所で女性の趣味が知れてなかなか危険である。浮気などの形跡はない。実際携帯電話というもので浮気はしないものなのかもしれない。だとしても、いまさらバレてもいいような状態でしかないということなのだろう。あまり面白くないので早々に返すことにした。
身近に見ることのできる携帯電話を考察し終えた私は、颯爽と街へくりだした。
豚出藻草太という学者は比喩的にそう言った。ちなみに読み方はトンデモソウタである。ふざけた研究とふざけた態度をもっとうにしている学者だが、その素性と経歴は輝かしいものだからふざけている。
私がこの説を見たのは最後の学校を卒業した頃だった。つまらない卒業論文を書き終えて、つまらない学位を取った私にはちょっとした刺激になった。これは馬鹿げていると思いながらも、私は携帯電話宇宙説を、一つ研究してみようと思い立ったのだ。
まず何から始めたらいいものか、私は自分の携帯電話を手に取った。そして、母親の携帯電話と妹の携帯電話。父親の携帯電話を机の上に並べて置いた。
己の携帯電話を見てみよう。黒く、ストラップはついていない。しょっちゅう落とすので頑丈なタイプのものだが、所々にキズが付き、塗装部分は剥げ、みっともないことこのうえない形態をとっていた。使用頻度に関しては、おそらく絶望的だろう。悲しくもなってくる。週に一度、使用することがあれば良い方だろう。メールと着信履歴は「ありません」の一点張り。壁紙やなんやら、データフォルダの中には、一つとして情報が入っていなかった。しかし、そんな使い方を多少気に入っていた。情報化の世間に斬って返すような心持ちと、紛失してもデータの流出が極端に少ない所で勝っている気がするからだ。唯一の友人や連絡を必要とする相手。それらはアドレス帳の中でメールアドレスと電話番号のみが、イニシャルのみで、入っている。機械に頼らず脳を活躍させていることも私の勝ち誇る理由だ。負け犬の遠吠えではないのだ。
母親の携帯電話に考察を移そう。白く汚れ一つない。複数のストラップは妹や私が昔買ってきてあげたものだったりして少し涙が浮かぶ。とにかく綺麗な携帯電話だ。折りたたみ式をバカッと開くと、待ち受け画面には大好きな俳優の笑顔が一面に溢れていた。見なかったことにしたいが考察には不可欠なのでしっかりとここにメモを取る。主な使用用途は主婦仲間との連絡や、妹や私の管理に使われる。父親との通話やメールがそれらと比べると極端に少ないのは、必要がないからかどうか、不安に思うこともなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくも……ない。余分なデータが入っていないのは、おそらくそれも必要がないからなのだろう。同じように、使い方が分かっていないからだとは私は思っていないこともなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくもなくも……ない。
恐ろしき妹の携帯電話を見させてもらおう。ホワイトのシンプルなデザインに、どす黒く汚れたストラップ達の大群。絶妙なコントラストを利かせているのは我が妹ながら敬服に値する。待ちうけ画面はごちゃごちゃしていて目に悪い。使用頻度は頻繁すぎてここに考察することも許されない。既に回収されてしまった。
残るは父親の携帯電話。会社で使っているからか、ストラップに小さなシャチハタや芯の収納式ボールペンなどがくっついている。実用重視だ。待ち受け画面を見ると初期設定のままだが、着信が入るとアイドルの写真が現れた。意外な所で女性の趣味が知れてなかなか危険である。浮気などの形跡はない。実際携帯電話というもので浮気はしないものなのかもしれない。だとしても、いまさらバレてもいいような状態でしかないということなのだろう。あまり面白くないので早々に返すことにした。
身近に見ることのできる携帯電話を考察し終えた私は、颯爽と街へくりだした。
テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学
二匹は追って追いかけられて。
どっちが始まりだったのかはわからないよ。猫が追いかけたのか、鼠が追いかけさせているのか。
ただ、彼らは楽しいよね。
なんでだろう。
どっちが始まりだったのかはわからないよ。猫が追いかけたのか、鼠が追いかけさせているのか。
ただ、彼らは楽しいよね。
なんでだろう。
テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学
酔っ払うことを恐れるな。
ただ酔っ払うことだけ恐れろ。記憶を保てないだけで、大した支障はない。
そら、今だって大して記憶を保ってないではないか。
見ろ、それほど対面繕えてないぞ。
ただ酔っ払うことだけ恐れろ。記憶を保てないだけで、大した支障はない。
そら、今だって大して記憶を保ってないではないか。
見ろ、それほど対面繕えてないぞ。
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