>保は運命を信じるか?
運命という物はあると思う。
坂道を転がり始めた車が落ちるように、
放られたボールが放物線を描くように、
そのように捉えていると言えば良いだろう。
よって、
人の出会いもまた玉突き衝突のように、
己の向ける足先も空中を踏まぬように、
一連の"流れ"があって、起承転結がある。
その流れを運命と呼んではいけないだろうか?
ロマンチックに語るなら安っぽい詩人に任せてしまえばいいじゃないか。
徹底的な現実主義なら狂信科学者に任せてしまえばいいじゃないか。
私はそう思っている。
運命という物はあると思う。
坂道を転がり始めた車が落ちるように、
放られたボールが放物線を描くように、
そのように捉えていると言えば良いだろう。
よって、
人の出会いもまた玉突き衝突のように、
己の向ける足先も空中を踏まぬように、
一連の"流れ"があって、起承転結がある。
その流れを運命と呼んではいけないだろうか?
ロマンチックに語るなら安っぽい詩人に任せてしまえばいいじゃないか。
徹底的な現実主義なら狂信科学者に任せてしまえばいいじゃないか。
私はそう思っている。
いつからだろう。スーパーマンになれないと思ったのは。
戦隊物でも、変身物でもなんでもいい。スーパーマンっていう種族だと思ってくれればいい。手から変な光線は出ないし、コンクリートの壁を貫くパンチだってできない。校則で移動してシュタッなんて音は出ないし、肩はこるし、食事も普通に食べる。食べなきゃ死んじゃうし、逆にあんなに食べたら、それはそれで死んでしまう。
駅のホームで、マンガを読んでいた。
私の青春がなくなったのはいつだったっけ。ついぞそんな風に思わされるマンガだった。考え直してみると、スーパーマンって、実は私の世代じゃない。精々アンパンマン止まりだろうか。話題にするならドラゴンボールが適当だろう。
小学校の頃、ズガピシドガバキなんて効果音を付けながら、どうしようもない殴り合いをするのはしょっちゅうだし、帰りの通学路で車を片手で持ち上げる空想や、手から気が出て粉砕する様を思い描くこともあった。カメハメ波はいつでも出せるように研究した、遂には打てるという友達も噂になったこともあった。
格闘技の道に目覚めて、本やらなんやで知識を集めたのはその後だっただろうか。でも、皆そうやってたと思う。それで話題が膨らんで喧嘩みたいになっていくのも経験がある。私は滅法殴ったりしかけたりしている方だったと思う。いつの間にか、現実にできることしか考えなくなっていた。
ぽろるろるろるろん。電車がようやく来る。私は席から腰を浮かし、電車が来る空間に目をやった。雨が降っていた。直角に落ちてくる雨を弾き飛ばして、電車の本体はホームに滑り込んできた。ガラスは曇って明らかにじめじめしていた。ドアが開いても人、人、人。そこには人の壁があるだけだった。乗るのが億劫になってしまう。今日は折角あいつらに会いに行くというのに、嫌になってしまう。
「あいつら」と言える友達を手に入れるまで、どれだけ遠回りをしただろう。手のひらで、不意に感じる自分の気が、ただの体温でしかなくて、誰にも、何も威力が発揮できないと理解するまで。
漫画や映画の物語の空想に、私達は何を求めているのだろう。いずれくる、夢を忘れる時のため。いずれくる、一連の動作に慣れるため。いずれくる、スーパーマンになれないと気持ちを紛らわすため。だって、いつかなれると想定していた。その想定していた時期がやってきているのだから。
なんだ、こんなものか。そんな気さえしてくる。
目的の駅のホームに着いた。一駅の違いで、そこは別世界になる。歩いている人も違えば、町並みも、しきたりも違う。決定的なのは、匂いが違うことだった。警察官の眼つきも町によって一変する。折りたたみの傘をさすと小さかった。慣れない町の雑踏で、肩身の狭い思いをすることになる。
人の間を、少し早い私の歩調がすり抜けて良く。追い越し追い抜き、幾度か行く手を遮られ、変ないらいらを溜め込んでいく。何を考える訳でもなくなって、浮かんでは消え、消えては浮かぶ、ボロボロのマントにゴーグルをつけた、空き地のヒーローが脳裏をかすめていた。
私の、小学生の頃の姿だ。
私が求めていたすごい人って、なんだったのだろう。手から光線でもなく、ヒーローであること、そのものだったのだろうか。いつの間にか、私はこうして色んなものの違いを考えて、欲をかいて、分からなくなっていった。
コンビニの前で、女子高校生が雨宿りをしていた。髪は濡れ、肩は濡れ、雨の中を走ろうか悩んでいるようだった。私は手に持った折りたたみ傘を見て、何故だか彼女に渡そうと思った。一度通り過ぎ、時間を見て、肩でわざとらしくうなだれて、コンビニに寄るフリをした。一度入ってから、深呼吸をする。ボロボロのマントとゴーグルをつけたような気分だ。つかつかと歩み寄り、思い切って、すごく思い切って、呼んだ。
「あの。傘、どうぞ」
声が変だったと思う。女子高校生も自分と気付かずに振り向かないので、手が震えてしまい、顔も引き攣っていくのが分かった。「あの、傘。いいから」もう一度繰り返す。鼻が膨らんでいるのではないだろうか。大して可愛くもない女子高校生が振り向いた。彼女も同じような顔になっていた。身を硬直させている所に、私は受け取りやすい位置に傘をさしだすと、反射的に女子高校生は手を出して、傘を受け取った。
私の手は傘の重みを失って、ふいと軽くなった。この場にいられなくなって、私は瞬間的に会釈をした。そして、雨の中を走ってあいつらに会いに行こうと思う。雨の音や走る音が耳を打つ。血の中で小さく、もっと小さく、「ありがとうございます」という声が聞こえ反響している気がした。
戦隊物でも、変身物でもなんでもいい。スーパーマンっていう種族だと思ってくれればいい。手から変な光線は出ないし、コンクリートの壁を貫くパンチだってできない。校則で移動してシュタッなんて音は出ないし、肩はこるし、食事も普通に食べる。食べなきゃ死んじゃうし、逆にあんなに食べたら、それはそれで死んでしまう。
駅のホームで、マンガを読んでいた。
私の青春がなくなったのはいつだったっけ。ついぞそんな風に思わされるマンガだった。考え直してみると、スーパーマンって、実は私の世代じゃない。精々アンパンマン止まりだろうか。話題にするならドラゴンボールが適当だろう。
小学校の頃、ズガピシドガバキなんて効果音を付けながら、どうしようもない殴り合いをするのはしょっちゅうだし、帰りの通学路で車を片手で持ち上げる空想や、手から気が出て粉砕する様を思い描くこともあった。カメハメ波はいつでも出せるように研究した、遂には打てるという友達も噂になったこともあった。
格闘技の道に目覚めて、本やらなんやで知識を集めたのはその後だっただろうか。でも、皆そうやってたと思う。それで話題が膨らんで喧嘩みたいになっていくのも経験がある。私は滅法殴ったりしかけたりしている方だったと思う。いつの間にか、現実にできることしか考えなくなっていた。
ぽろるろるろるろん。電車がようやく来る。私は席から腰を浮かし、電車が来る空間に目をやった。雨が降っていた。直角に落ちてくる雨を弾き飛ばして、電車の本体はホームに滑り込んできた。ガラスは曇って明らかにじめじめしていた。ドアが開いても人、人、人。そこには人の壁があるだけだった。乗るのが億劫になってしまう。今日は折角あいつらに会いに行くというのに、嫌になってしまう。
「あいつら」と言える友達を手に入れるまで、どれだけ遠回りをしただろう。手のひらで、不意に感じる自分の気が、ただの体温でしかなくて、誰にも、何も威力が発揮できないと理解するまで。
漫画や映画の物語の空想に、私達は何を求めているのだろう。いずれくる、夢を忘れる時のため。いずれくる、一連の動作に慣れるため。いずれくる、スーパーマンになれないと気持ちを紛らわすため。だって、いつかなれると想定していた。その想定していた時期がやってきているのだから。
なんだ、こんなものか。そんな気さえしてくる。
目的の駅のホームに着いた。一駅の違いで、そこは別世界になる。歩いている人も違えば、町並みも、しきたりも違う。決定的なのは、匂いが違うことだった。警察官の眼つきも町によって一変する。折りたたみの傘をさすと小さかった。慣れない町の雑踏で、肩身の狭い思いをすることになる。
人の間を、少し早い私の歩調がすり抜けて良く。追い越し追い抜き、幾度か行く手を遮られ、変ないらいらを溜め込んでいく。何を考える訳でもなくなって、浮かんでは消え、消えては浮かぶ、ボロボロのマントにゴーグルをつけた、空き地のヒーローが脳裏をかすめていた。
私の、小学生の頃の姿だ。
私が求めていたすごい人って、なんだったのだろう。手から光線でもなく、ヒーローであること、そのものだったのだろうか。いつの間にか、私はこうして色んなものの違いを考えて、欲をかいて、分からなくなっていった。
コンビニの前で、女子高校生が雨宿りをしていた。髪は濡れ、肩は濡れ、雨の中を走ろうか悩んでいるようだった。私は手に持った折りたたみ傘を見て、何故だか彼女に渡そうと思った。一度通り過ぎ、時間を見て、肩でわざとらしくうなだれて、コンビニに寄るフリをした。一度入ってから、深呼吸をする。ボロボロのマントとゴーグルをつけたような気分だ。つかつかと歩み寄り、思い切って、すごく思い切って、呼んだ。
「あの。傘、どうぞ」
声が変だったと思う。女子高校生も自分と気付かずに振り向かないので、手が震えてしまい、顔も引き攣っていくのが分かった。「あの、傘。いいから」もう一度繰り返す。鼻が膨らんでいるのではないだろうか。大して可愛くもない女子高校生が振り向いた。彼女も同じような顔になっていた。身を硬直させている所に、私は受け取りやすい位置に傘をさしだすと、反射的に女子高校生は手を出して、傘を受け取った。
私の手は傘の重みを失って、ふいと軽くなった。この場にいられなくなって、私は瞬間的に会釈をした。そして、雨の中を走ってあいつらに会いに行こうと思う。雨の音や走る音が耳を打つ。血の中で小さく、もっと小さく、「ありがとうございます」という声が聞こえ反響している気がした。

